「新入社員の悩みゴト。」-短編ラジオドラマ脚本-
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☆新入社員を想う上司のある日を描いたラジオドラマ。(約1800字)
細貝 女 先輩上司
草野 男 新入社員
SE オフィス(電話の音など)
細貝(M)「6月。それはGWを抜け社会の厳しさにぶち当たる新入社員が疲れてくる時期。言うなれば、地獄の”6月病”である。先輩社員として、サポートしないわけにはいかない。」
草野 「うーん、どうしよう。どうすれば…」
細貝 「草野くん、大丈夫?悩みあるなら相談乗るよ。」
草野 「すいません…相談してもいいですか。」
細貝 「あ、じゃあ飲み行こう!奢る!奢るからさ!」
SE 居酒屋
細貝(M)「居酒屋は平日の水曜にも関わらず、満席に近いほど賑わっている。正反対に草野くんは思いつめた顔。普段はカップ麺を啜りながら「幸せだー」なんて言ってる草野くんがこれほど疲弊してるとは。…ここは、盛り上げなくては。」
細貝 「じゃあ、乾杯しよっか!」
草野 「はい…あぁ、どうしよう。」
細貝 「とりあえず生だよねー!仕事終わりって感じがしてさ!」
草野 「すいません…。」
細貝 「えぇ、何で謝るの~!」
草野 「僕、ビール飲めないです…。」
細貝 「え、あぁ。そっち。ごめんごめん、ほら好きなの頼みな!」
草野 「じゃあ…日本酒で。」
細貝(M)「ビールじゃないのに日本酒…いきなり!?と思いながらもこれ以上、負担をかけるわけにはいかない。しばらく何気ない会話をして、お酒が回ってきたところで…」
細貝 「悩み事、あるんでしょ?」
細貝(M)「そう切り出すと、一瞬顔が固まってから、おぼつかない口調で言葉を発した。」
草野 「はい…あの、実は…ぼく、その…(かなりためらって)」
細貝 「あー言いづらいよね。まぁその気持ちわかるかなぁ…」
草野 「え?何で分かるんですか?」
細貝 「わかるよ、そりゃぁ。私だって同じように悩んだもの。」
草野 「本当ですか!?」
細貝 「え、そんなに驚くこと?新入社員は誰しも通る道だと…」
草野 「そうなんですね!よかったぁ…。じゃあ、どうしましょう。」
細貝(M)「きた。ここでどんな返しをするかが、今日の私の大仕事。会社で疲れた心を癒すとしたら…」
細貝 「えっと…例えば色んなとこに旅行するとか。温泉入ったり!」
草野 「あーそういうの多いって聞きますけど、あんま時間ないので…」
細貝(M)「そうか、確かに疲れているとそんな気力もないのかもしれない。なら…」
細貝 「高級レストランとかでディーナーとか!大人な感じ出るよ!」
草野 「あー、でもなんか高級レストランってマナーとか厳しいって言いません?」
細貝 「厳しくはないだろうけど、多いかもね。」
草野 「一緒に行って、いろいろ言われるのも嫌だなぁって。」
細貝 「え…?一緒に?」
草野 「はい。え、あ。一緒にじゃないんですか?」
細貝(M)「…そうか。彼女と、って意味か。しまった。これは配慮ができない先輩だ。彼女としたいこと…それを考慮するなら…」
細貝 「じゃあ、遊園地はどうかな?」
草野 「先輩、冗談言うんですね…流石にきついっすよ!」
細貝 「あぁ…会話持たないって言うもんね、ごめんごめん。映画とかかな?」
草野 「…あの、先輩はちなみに、何したんですか?」
細貝 「あぁ…私は…その時そんな人、いなかったから。1人で読書に明け暮れてたかなぁ…。」
草野 「あ…なんか、すいません。先輩にこんな相談するなんて…」
細貝(M)「おっと、これは癪に障る。いくら想い人がいなくたって、先輩としていい回答を…そうだ。」
細貝 「もし私なら、家で一緒にゆっくりするかな。それが一番でしょ」
細貝(M)「自信満々に答えると、草野くんは一瞬驚いたようだったが、」
草野 「確かに、それが一番かもですね。お金とかじゃなくて、気持ちというか。親孝行ってやつですか。」
細貝 「え、親?彼女じゃなくて?」
草野 「彼女??」
細貝 「ちょっと、まった。草野くん、何悩んでるの?」
草野 「え、初任給の親へのプレゼントですけど。」
細貝 「仕事の悩みとかじゃなくて?」
草野 「はい…もう初任給もらってから1ヶ月くらい経って今更なにを渡そうかなって。」
細貝 「な、もぉぉ…!それくらいすぐ決めなさいよ!」
草野 「えぇ…相談乗ってくれるんじゃなかったんですか。」
細貝 「親なんて、何渡しても喜んでくれるわよ。私もそうだったし。」
草野 「でも、先輩、親御さん亡くなったんじゃ…」
細貝 「あぁぁ!それは違くって…!すいませーん!ビールお代わり!!!」
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