「空飛ぶペンギン」-短編ラジオドラマ脚本-
※初めての方は利用規約を必読ください。
☆ペンギンも「飛んでいる」と錯覚しているのだろうか。(約600字:約2分)

・一ノ瀬 翔(ショウ) 大学4年生 男
・野口 双葉(フタバ) 大学4年生 女
双葉 ペンギンが飛んでる~!可愛い!いい感じにとってよ。カメラマンの卵!
翔 ハイハイ。
翔M マスクが蒸れて、苦しい。梅雨明けの晴天。俺は、彼女と水族館に来た。
SE ペンギンが水をかき分ける
翔M ガラス越しに泳ぐペンギンたち。都会の青空は、水中に溶け込んでいく。
翔 ……飛んでるって錯覚するんかな。
双葉 何その発想。怖い。
翔 何度も来ると、かわいそうになって。本当は飛べないのに。
双葉 年パス、持ってるんだっけ?
翔 まぁ。
双葉 都会のド真ん中。そんな狭い水族館に、何度も行く?
翔 撮影の練習。大学も近いし。まぁ今はオンライン授業だから関係ないけど
双葉 ……就職どう?
翔 カメラの仕事は駄目だった。全部。
双葉 そう。
翔 ……地元、戻るよ。
双葉 ……そっか。
翔 双葉は?
双葉 東京、かな。まだわかんないや。
翔M 視線の先で、ペンギンも必死に飛んでいた。錯覚したいのか、お前も。
双葉 翔ならきっと、いいカメラマンになれるよ。応援してる。
翔 ……あぁ、カメラマンの卵だからな。
SE 飛行機が空を通過する
翔M 水中を、飛行機が泳ぐ。都会で、ペンギンが飛ぶ。なんてデタラメな世界だ。
SE シャッターを切る
Fin