「レイン・ノイズ」-短編ラジオドラマ脚本-
※初めての方は利用規約を必読ください。
☆梅雨の時期のモヤっとした気持ちを描く青春ラジオドラマ。(約1000字:約4分)
ハッシー (男) サッカー部のムードメーカー
マコト (男) 野球部のエース
スミ (女) マネージャー
SE 雨
マコト 「毎日雨か。ザーザーうるせーわ」
スミ 「梅雨だもん。湿気すごくて髪とか…マコトは坊主だから関係ないか」
マコト 「うっせーな。1ヶ月もすれば坊主ともお別れだ」
スミ 「甲子園、行けるかな。」
マコト 「…さぁ。」
スミ 「あんた、エースなんだからシャキッとしてよね…!甲子園連れて行くくらい…」
ハッシー 「お、バカップル。野球部は練習休みか?」
マコト 「付き合ってねーし、今日は休み。」
スミ 「ハッシー、サッカー部は?」
ハッシー 「休みだな、昨日雨の中で試合したから。」
スミ 「雨の中で?大変だねぇ…」
ハッシー 「ま、野球部と違って優勝目指して…ってマネージャーとエースの前で言うことでもないか。わりーわりー」
スミ 「いいのいいの、どうせウチのエースはこんなだから」
マコト 「うるせぇな…」
SE 走り出す
スミ 「ちょっと、マコト?…外雨だよ!?」
SE 傘もささずに雨の中
マコト(M) 「なんだよ、俺だって本当は甲子園とか、口にしたくて。でも、自分もチームもそんなレベルじゃないって…わかってんだよ」
ハッシー 「おい、バカ。そんなとこいるとプールの洪水に飲み込まれんぞ」
マコト 「んだよ。うるせーな…雨も、周りも…うるさいんだよ!ほっといてくれよ!」
ハッシー 「おぉグレてんなぁ。どうせしょーもないこと考えてんだろ。」
マコト 「お前には…。スミにも…どうせわかんねーよ。勝ちたくても勝てない奴の気持ちなんて…」
ハッシー 「はぁ…なに雨でセンチメンタルになってんだよ。ちょっとこい」
マコト 「おい、引っ張んな!そっちプール…!」
SE 水に飛び込む
マコト(M) 「投げ込まれた体は、プールに沈む…。冷たくて、苦しくて…でも、周りの音が一気に消えた。ノイズが、消えた。」
マコト 「っは!!おま!死ぬぞ!?」
マコト(M) 「プールサイドに立つハッシーは笑っている。悪魔か、コイツは。」
ハッシー 「雨、くだらねーだろ。プールで濡れちまえば、もういいかって吹っ切れる。もっとシンプルに生きろよ、勝ちたかったら勝つ。努力する。それでいいだろ。」
マコト 「…あぁ。そうかもな」
ハッシー 「風邪引くしあがんぞ、手、貸せよ」
マコト(M) 「たしかに、水の中は…悪くなかった。吹っ切れた。意外と世の中はシンプルなのかもしれない。だけど」
ハッシー 「よし、あげるぞ…っておい引っ張ん!?」
マコト 「カッコつけんな、バーカ!!」
SE 水に飛び込む音
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余談:放送研究会6月ショート作品にて公開
・制作裏話
毎月1回、放送研究会で公開しているショートストーリーです。
今回のテーマは「梅雨」というコトで、着案は「ノイズ」です。
梅雨、個人的にはとても嫌いで。というのも「雨に濡れる」ことが無理。
電子機器を多く持ち歩いてるというのもありますが、学校の行きに靴が濡れたり、服が濡れたら正直もう1日ダメになる気がします。
ともあれ、「雨に濡れる」ということは些細なことさえ嫌になってくるわけです。
晴れてたら気にならないようなことも、どこか気に掛かる。
そんな気持ちを青春に昇華しました。
あと、雨の日にプールに飛び込むと最高な気分になれます。
濡れる、濡れないなんてどうでもよくなる気がします。
「本当は世の中って複雑そうに見えて、意外とシンプルなんじゃないか」
そう思うことがしばしば。
もっと「やりたいからやる!」「勝ちたいから努力する!」でいいんじゃないかって。
今の世の中(特にツイッターとか)は「努力するだけじゃダメじゃない?効率的にさ、云々カンヌン」見たいのが多い気がして。
もちろん、闇雲に努力するだけじゃダメですが、それでも心持ちや周りに見せる姿なんてシンプルな方が清々しくていい気がします。
何でしょうね、ほんと、もっと生きやすい社会がいいなぁ…。
なんて。長々と裏話書いてる私は複雑に物事考えて、世の中を複雑にしようとしてる。そんな矛盾に今日も笑いながら脚本を書いてます(笑)